日没から数刻、真選組はとある旅籠の一室へ突入しようとしていた。

過激なテロを行う攘夷派グループの足取りを、長く地道な内偵を経てようやっと掴んだのだ。

局長・副長と共に精鋭の一番隊・十番隊まで配置した、満を持しての捕物だ。

頭に叩き込んだ間取りを駆け抜け目指す二階に辿り着くと、

土方は先頭を切って襖を蹴り破り、部屋に踏み込んだ。

驚いた攘夷派浪士達が一斉に抜刀する。

「御用改めである! 神妙に   



ごん。



一気に殺気立ち緊迫した空気の中で響いた鈍い音。

音がしたのは確かに上の方でだったが、原因は土方の足元にうずくまっていた。

「……ぉおっつうう〜…」

…何の事は無い、続いて踏み込もうとした我らが大将が長身を屈めそこね、

鴨居に額を激突させたのだった。

双方が抜刀し対峙したまま、何とも微妙な沈黙が広がる。

近藤は片手で額を押さえてしゃがみ込んだまま、もう片方の手をひらひらさせた。

「…あ、どーぞ始めて…」

実の所、この光景が初めてではなかった真選組は自失から立ち直るのが一瞬早く、

ほとんど抵抗を受けずに標的の拘束に成功したのだった。




後に取り調べを受けた浪士達の、真選組局長への呪詛を吐く事しきりだったという。





〈邪魔者はアイツ〉

命懸けてる現場でやるかなァと思ったんですが、ま、ネタです(笑)
タイトル、近藤さんにとっての鴨居がそう、というつもりだったんですが、
浪士達も改めて近藤さんをそう思ったでしょうとも。